日曜日, 12月 24, 2006

記憶のメカニズムに関する発見と、ある日本人のサバイバル・ミステリー

NYタイムズやBBCニュースの科学欄記事は項目が多い上にそれぞれの分量が多いものだから、やはり、追いかけて行くのは大変だ。


記憶は脳の海馬と新皮質との「対話」によって定着するとの、従来から言われてきた仮説が、脳の電気的実験結果から確認できたとされる18日の記事は非常に興味深い。
http://www.nytimes.com/2006/12/18/science/18memory.html?_r=1&oref=slogin
In Memory-Bank ‘Dialogue,’ the Brain Is Talking to Itself

ウェブサイトに掲載した要約を再録すると次の通り。

Daoyun Ji and Matthew A. Wilson, researchers at the Massachusetts Institute of Technology による、Nature Neuroscience のウェブサイトに発表された研究
―― 脳の海馬中にplace cellsと呼ばれる細胞群があり、地図のように位置情報を再現する。ネズミが眠っている間、昼間にある場所を通過した際に起きた電気的刺激の連続が高速でしかも逆方向に再現し、同じ事が新皮質にも生じており、少しの時間のずれがあるという実験結果から、次のような推論を行っている。
◆海馬の視覚に関わる部分と新皮質との「対話」によって記憶が定着するという説が実験的に確認できた。◆この対話を統括する第三の部分があると予想。◆対話は新皮質の側から開始される。◆新皮質は海馬で進行していることの意味を捉えようとしている。◆睡眠の機能の一部を説明できる。◆海馬中の生の記録は消えることが無く、記憶の消失は新皮質との連絡の消失である。◆ネズミも視覚的な夢を見る。

海馬中に記録された消えることの無い生の記録の実態は一体何なのか。また新皮質が海馬で進行していることの意味を捉えようとしているという認識は分かるような気がするが、しかし新皮質という臓器、物質的な臓器が「意味」を捉える、認識するとはどういうことなのか、等々、興味は尽きない。


六甲山で遭難し、救助された人物が冬眠状態であったというニュースは当然日本で報道されているが、日本のニュースサイトでは科学欄の記事としては取上げられていなかったように思う。このニュースがBBCニュースの科学欄で取上げられている。この記事では当のUchikoshi氏の発言として、太陽の降り注ぐ草原で横たわっていたという最後の記憶が紹介されていたが、この発言は日本のニュースでは聞いていなかった。
イギリスの栄養学の権威者の発言として、水分を全く摂らずに生存していたとは信じられないとのコメントが最後に来ている。

とにかくこういう事実は忘れられることなく、無視されることなく研究され続けて欲しいものだと思う。