日曜日, 12月 10, 2006

味覚と嗅覚と視聴覚に関する2つの記事

最近ニューヨークタイムズに2件、それぞれ味覚と嗅覚に関する記事が相次いで出た。11月23日の記事と12月3日の記事である。

味覚と嗅覚との関係は良く分からないが、他に風味という言葉もあり、密接な関係があることは確からしい。前者記事の内容は味覚と聴覚との共感覚に関するもので心理学の研究であり、感覚の生理学的なメカニズムに関してはあまり言及がなかったが、後者記事のほうは嗅覚のメカニズムがテーマである。

後者は嗅覚のメカニズムに関する Luca Turin という生物学者の著書の書評であるが、評者は著者のことを匂いの詩人と表現している。私は知らなかったが、経歴に関する部分ではNombre Noirという日本の香水のことも出てくる。Publicityで人気のある学者であって、学界では異端者扱いの面もあるらしい。

味覚と嗅覚という、似たような感覚の話題であること以上に両者の記事内容に関連があるかどうかは分からない。しかし共通するキーワードがあるとすれば、それは「振動」だろう。というのは、前者では主として聴覚と味覚との関連を扱っているが聴覚や視覚は音波や光といった波動に深い関係がある。それに対して後者の記事では嗅覚も一種の振動に関わっているという説が紹介されているからである。
もしもこの説が正しいとすれば、嗅覚も振動、波動の感知に関わる感覚ということになり、聴覚と視覚の仲間に入ることになる。さらに思い起こしてみると、熱も振動の感知である。
とにかくこの問題は非常に興味深いし、この学者が学界よりもPublicity で人気があるというのも納得できる話である。

振動、波動といえば、例えば水晶の波動が健康に良いなどといった、科学者からは似非科学とか疑似科学などと云われる諸説で、よく使用される言葉、概念でもある。こういう諸説では波動、振動、バイブレーション等といっても何の波動かを言わないし、言うとしても心の波動とか、水晶そのものの波動とか、そういう程度の事しか言わないものだから多くの科学者からは相手にされないか、害悪視さえされている。

しかし、こういった話を聞くと振動、波動には実に多様な種類のあることが分かり、私などには殆どわかっていないことを改めて思い知らされる。分子の振動というと、個体の場合は熱の源泉という印象があるが、分子の振動といっても色々なのだろう。記事によると “inelastic electron tunneling,”という量子力学現象の難しい理論で説明される可能性があるということであるから。


もう一つ、こういった感覚の問題で重要と思われる問題は「意味」の問題である。音楽や造形芸術、すなわちイメージと意味との関係は哲学や心理学で着ていると思われるけれども、匂いとか味覚と意味との関係となるとどうなのだろうか。